Publish and then perish

台湾の優れたプログラマであるオードリー・タンは、蔡英文政権において政務委員を務めたことでもよく知られている。この人の理念・思想は学ぶべきところ、共感するところが多くある。それらがよく見えるインタビューがあったので残しておく。

次が素晴らしい(#3 より)。

でも、人生の最初の12年間は、次の日に目が覚めるかどうかわからないまま眠りにつく毎日でした。この命がいつ尽きるかわからないという状況のせいで、ある習慣が身につきました。それは、毎日学んだことをすべて公開するということです。だって、もしかすると次の日にはいないかもしれないじゃないですか。いわば、「公開してから逝け(Publish and then perish)[★02]」ということですね。つまり、旅立つ前に知識を公開するということが最大のモチベーションになったのです。自分自身をパイプ役だと考えて、良いアイデアを思いついたら毎日公開する。そうすれば、安心して眠りにつけます。たとえ二度と目覚めることがなくても、アイデアがすでにパブリックドメインに存在しているからです。自分の仕事の著作権をすべて放棄しているのも、これが理由です。私がこの世を去った後も私の作ったものを楽しみたいと思う人々を、70年も拒絶するわけにいきませんから。

つまり、私が言いたいのは、まともな先人でありたいということなのです。未来の世代には、私が今享受しているよりももっとたくさんの可能性を楽しんでもらいたい。完璧なAIの設計などで、その可能性を閉ざしたくないのです。つまり、私が考えるまともな先人とは、自らがこの世からログアウトするときに、自分がログインしたときよりも、もっと可能性に満ちた、より良い世界を残して逝ける人のことです。

この部分だけを見せても、残念ながら綺麗事を言っているだけと受け取られてしまうかもしれない。このインタビューは、(#3 だけでもよいから)すべてを読んでもらうほうがよいだろう。

ほかにも、技術と感覚におけるバランス感覚を自然と持っていることが伝わる部分もある。ビデオ会議では細かなニュアンスが失われ心理的に投影してしまうデメリットがあることを語る。とはいえ対面にすべきだと簡単には結論しない。半年に一度程度会って整えればよく、それが一番いいだろうと落ち着いている。ともすれば極端になりがちな議題について、優れた技術者であるところのオードリー・タンがこう述べているのは、学ぶところが大きかろう。